ホットケーキ、あるいは黒猫の抱く幸せの味

オリジナル小説。
スポンサーリンク

カイエとウルスラのお話、第3弾!
今回は、うるたんが書いてくれたお話でっす!

ホットケーキのように甘々なお話に書いてくれましたよ。(*ノ∀`*)ウフフ♪

 


 

カイエとの新婚生活を始めてから、数か月後のある日のこと。
完璧主義であるウルスラは、日頃の感謝をどう表現しようか悩んでいた。

 

ウルスラは元々、成り上がりの資産家とはいえ「お嬢様」という生まれ。
一方のカイエは、天涯孤独の身の上から、大体のことは自分でする・・・というのが習慣になっていた。その差異は、否が応でも生活に現れる。

家事が一通りこなせてしまうカイエに、負けじと頑張るウルスラであったが、お皿を扱うとうっかり手を滑らせて割ること数十枚。(※なおその破片は、某ゴブリン族の秘技である[分解]によって一部素材を回収し、錬金術によって新たな皿を制作するという技で損失を抑えている。こんなところでは無駄にスペックの高いウルスラである)

まあ初期に比べれば大分マシになったとはいえ、カイエほどの手際にはまだまだ至ってない。
それでも失敗にめげずに、健気に一生懸命家事をしようとするウルスラの背中を見守るカイエからすれば、とても可愛らしいといえるのだが。
それでも、カイエに助けられてばかりいると考えているウルスラは、どうしたものかと思案に暮れるわけである。

今日のカイエは「野暮用」と称してグリタニアへ出掛けている。
帰ってくるのは本日の夕刻とのことなので、それまで数時間ほど時間があった。

「カイエに何を返してあげればいいのでしょう?」

大体のことはカイエは喜んでくれる。
けどそれではダメなのだ。
普段以上にカイエに喜んでもらえるようなことはなんだろう?
そうなるとおいしい食べ物になるのだろうか?
高級料理店に食べに行くというのは、それはそれでドキドキだが・・・・・・などと考えたウルスラは、ふと遠い記憶を思い起こした。

ウルスラにとっての幸せの味。
それは雇っていたシェフが作る豪華な料理ではない。
無論シェフの料理も大変美味だったが、それとは別に、ウルスラが幸せを感じていたのは、かつては冒険者だったと語る母親が、自らの手で焼いて見せた[ホットケーキ]というお菓子だった。

薄力粉を丁寧に篩にかけてきめ細やかにしたものに、重曹と塩に砂糖を混ぜた特性の粉。
それを予め準備してた乳と鶏卵をかき混ぜた液に注いでかき混ぜる。
かき混ぜることだけなら幼いウルスラでもできたので、スキレットを火で温めていた母の傍らで、頬に飛び散ったミックスの液に気にせずに一心不乱にかき混ぜていたのを覚えていた。
スキレットの中のホットケーキが焼くことで生じるあの甘い香り。
同じく冒険者だった父が、どこからともなく蜂蜜を取り出しては、焼き立てのホットケーキにたっぷりとかける。
小麦色に焼けたホットケーキに黄金色の蜂蜜が広がっていく光景に、幼い頃のウルスラは目を輝かせていたのだ。そうだ、あれがいい!

そうと決まれば、突撃じみた行動力で実行しようとする彼女である。

「ふ、この今の完璧で無欠のウルスラにかかれば、ホットケーキの一つや二つ・・・・・・」

ウルスラの脳内では、おいしいホットケーキを食べて幸せそうに顔を緩ませるカイエという妄想が広がっていた。なんておいしいホットケーキなんだ!と喜ぶ彼の輝きぶりも、ウルスラ脳内フィルター効果で三割増しである。
そして褒めてもらってゴロゴロする自分という邪念も相まって夢心地である。

だが失念してたのである。
粉の調合から焼きに至るまですべては完全に母任せで、自分は粉の調合からホットケーキそのものを焼いたことがなかったということに。

「ぎにゃぁぁぁ・・・・・・!? そ、そんなはずでは・・・・・・」

せっかちなウルスラはホットケーキの焼き方をしらない。
敵をファイジャで焼く火加減は知っていても、スキレットでホットケーキを焼く為の程よい温度を知らなかった。
さらに、じっくりと待つということが大事であることを。
そのせいでまっ黒焦げや、白っぽくべったりとした「ホットケーキらしきもの」を量産してしまうことになった。口に含むと、ふんわりとした食感には、程遠い出来だ。

「えっと・・・・・・今度はもう少し、もう少しだけ温度を落として・・・」

そして思い出したのである。
焼いている最中の生地の様子・・・・・・表面にぷつぷつが広がっていくのをじっくりと待っていた母の姿。
まだ返さないの?と聞くウルスラの頭を撫でながら母は答えるのだ。
あともう少しよウルスラ、慌ててたらおいしいホットケーキはできないんだから・・・。
ぐぐ、と堪えるウルスラの目の前のスキレットの中に、ぷつぷつの広がったホットケーキの生地があった。

 


 

「ただいま~~って・・・なんだろ、この甘い香り。菓子でも焼いているのかい?」

夕刻、帰宅したカイエを出迎えたのは、家じゅうに広がる甘い香りだった。
エプロン姿で出迎えたウルスラが両手で掲げる皿の上には、焼きあがったばかりの小麦色のおいしそうなホットケーキが乗っていた。

「おかえりなさいカイエ。カイエは甘いものは平気ですわよね?
・・・・・・それでその、ホットケーキを焼いたのですけども」

上目遣いに見上げ、そわそわと尻尾を揺らして様子を伺うウルスラ。
その頬に飛散る粉液と、両手に残る赤い痣、遠目に映るキッチンの惨状には気づかぬ素振りで、カイエはふふっと笑った。

「ああ、もちろん頂くよ。
・・・・・・おっと、そういえば、お土産にと思って持って帰ったのがあったんだ」

懐から取り出したのは瓶詰にされた容器。
黄金色に輝くそれをウルスラはよく知っていた。

「グリタニアで仕事っていってただろ?
その帰りに巨大な蜜蜂の巣の除去を頼まれてたんだ。
うまいこと巣の撤去はできたんだけど、その巣の一部が欠けてしまってね」

自然を大事にするというグリタニアの方針では、自然にできてしまった巣をむやみに壊してはならないとされている。人が寄り付かない場所へとそっと移動させてしまおうという流れになったのだが、いかんせん蜜蜂からの攻撃はどうしようもない。
そこで吟遊詩人のカイエが眠りを誘う詩を用い、蜜蜂を大人しくさせて、その間に巣を移動させようという流れになったのだ。
作戦は大部分が成功となったのだが、切り離す際に一部だけ欠けてしまい、元の場所にとりのこされてしまった。

「それでその巣の一部から蜂蜜を?」
「そ、こっちとしてはお土産ができたしよかったんだけどな・・・・・・コイツを」

ウルスラが掲げる皿の上に鎮座するホットケーキに、黄金色の蜂蜜が注がれていく。
その光景はウルスラが抱いている幸せの味の風景そのものだった。
ああ、そうだ。
ウルスラがこれを幸せの味だと思ってた本当の理由を思い出していた。
母が作ったホットケーキに、父が買ってきた蜂蜜を注いで。
それを3人で仲良く食べていたあの風景とその時間が幸せだったからだ。

「せっかくだし二人で食べようか?」

そして新しい幸せの味は、大好きな彼と一緒に食べるこのホットケーキなのだということを確信したのだった。

 

 

[しゅげろぐ。]内で記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。
オリジナル小説。
ルナフィナをフォローする
しゅげろぐ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました