夢魘は、君が光に昇華する。4-③

オリジナル小説。

 

このところ、夢魔は焦っていた。

―――このままじゃ・・・・・・・・・足りない・・・・・・。

あれから数年の時を経てカイエは成人となった。
身体と共に、心も成熟し、次第に悪夢に動揺しなくなっていたのだ。
そこには、カイエ自身も淡い思いを向ける、ウルスラの存在が関係していたかもしれない。

彼女がまとう白い光が、夢魔には恐ろしかった。
このままでは、悪夢を食べて成長することができなくなってしまう。

どうすればいい?

―――あの娘を・・・・・・・・・失わせればいい。

そして、夢魔は、動き出す。

 

 

カイエはその晩、久しぶりに悪夢を見た。

燃え盛る炎。襲われる集落。無数に蠢く黒い妖異たち。
その向こうに、ぼんやりと見える、黒い法衣をまとった黒髪の少女。
まるで主であるかのように、尊大な態度で立つ少女は手を広げ、魔物たちを扇動する。

周囲の人々を次々と殺し、両親を殺し、そして我が身へと迫る影。
恐怖にせり上がる鼓動。
魔物たちが振り上げた腕の向こう・・・・・・そこにいた黒い法衣の少女は。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ・・・・・・・・・はっ・・・・・・・・・は・・・・・・」

寝台の中で荒い呼吸を繰り返すカイエは、くっそ!と毒づいて頭を抱えた。

夢の中の少女の顔は、ウルスラだった。

もちろん、そんなはずは無いのだ。
自身との年の差から考えれば、彼女が生まれたのはあの事件の少し前で、カイエの悪夢には何の関わりもない。明らかに、夢魔が意図して見せている虚構だ。

ただ、少しだけ気になることがあった。

悪夢に気を取られてすっかり忘れていたのだが。
あの晩、救世主の如くあらわれ、自分を助け出した冒険者たち。

彼らはなぜ・・・・・・あの場に居合わせたのだろう?

 

 

翌日、カイエは、当時の様子を知る知人の元を訪ねていた。
遊牧の民が越冬の為の一時を過ごすために作られた小さな集落。
そこに、長年住み続ける老婆だ。

彼女の話によれば、あの日、妖異たちの出現は予見されていたのだという。

集落から少し離れた森でひとつの秘術が実行され、次元の裂け目が発生した。
駆けつけた憲兵によって為政者へと報告され、まもなく冒険者たちが駆けつけたのだが、妖異の幻術に惑わされ、集落に辿り着くのが遅れてしまったのだ。

冒険者の1人、呪術師だった女性が苦戦の末に次元の裂け目を塞ぎ、脅威は去った。
しかし彼らが集落にたどり着いた時には、半数以上の人々が犠牲になっていた。
自身の失態を悔いた彼らは、冒険者を引退し、後に資産家として財をなしたという。

「あの冒険者たちは、手にした莫大な資金を、あんたと同じように親を亡くした孤児たちの救済に注ぎ込んでいたんだよ。だけど、何年か前に流行り病で亡くなって、たった1人の娘さんも、いまは行方が知れないって話をきいたがねぇ・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・まさか・・・な」
「なんだい? なにか心当たりでもあるのかい?」
「い、いや・・・・・・」

老婆の元を離れたカイエは、すぐに冒険者ギルドへと戻った。

ギルドマスターへと頼み込み、当時の記録を漁る。
そして、そこにあった事実に呆然とした。

 

 

あの日、自分を助けた冒険者は、ウルスラの両親とその仲間たちだ。

 

彼女の纏っていた白い光の気配。
それは当時妖異たちを退けた、呪術師だった母親から受け継いだ異能。
カイエの中にいる夢魔が記憶し、恐れていた力だ。

実際にカイエの目に[白い光]として見えていた訳ではないが、夢魔が知覚した力を、自身のもののように感じていたというわけらしい。

 

 

(・・・・・・もし・・・・・・あのとき・・・・・・・・・・・・)

ウルスラにも、その両親にも、何も罪はない。

だが明らかになった事実に、カイエは言い知れぬ、心の闇を感じていた。

 

4-④へ続く。

 

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